平成二十二年のお正月

紅白歌合戦を見ていた。
若い頃、武田さんの病室で二人で見ていた。
深夜の巡回の看護師さんが懐中電灯を持って見回りに来た。
正月だけは大目に見てくれた。
看護師さんにはお正月もなく気の毒だった。
それから暫くして武田さんは亡くなった。
いつも紅白を見る度にその頃を思い出す。
私は、お陰様で元気に退院が出来て社会生活を営めている。
仏壇と神棚と、そして外に在る地蔵の祠に灯明を点けて、
一年の安寧なる日常であるように祈念をする。